2021年7月3日
2020年の東京オリンピック開催に向けた建設需要の増加と、東北震災の復興需要により、建築業界の人手不足が深刻化しています。中でも、鳶職をはじめとする現場の建設作業員は、人手不足という以前に人材そのものが不足しており、若手の育成が急務となっています。
この記事では建築現場を代表する職種といえる「鳶職」について解説します。
もくじ
鳶職とは、建設や土木工事の現場で、おもに高所作業に従事する作業員をいいます。従来は基礎工事の段階から鳶職が現場に入っていたため、「建設は鳶に始まり、鳶に終わる」といわれましたが、近年は分業化が進んでおり、基礎工事は「基礎屋」と呼ばれる職人が受け持つことが多くなっています。
鳶職もまた作業内容によって、いくつかの職種に分けることができます。最も一般的で数が多いのは、建設や土木の工事現場に足場を設営または撤去する「足場鳶」です。次に多いのがクレーンでつり上げた鉄骨を組み立て固定する「鉄骨鳶」で、超高層ビルなどの高所作業が多いという点で「鳶職」らしい「鳶職」といえます。
ほかにも鉄橋や高架橋を専門とする「橋梁鳶(きょうりょうとび)」、木造の一般住宅建設を専門とする「町場鳶(まちばとび)」、送電線の架線工事を専門とする「送電鳶(そうでんとび)」などがあります。
鳶職の養成機関としては、「東京鳶高等職業訓練校」をはじめ、一部の職業訓練施設に「とび科」が設置されていますが、鳶職の場合、未経験者でも見習いとして雇用される場合が多く、学歴や資格がなくても就職に支障はありません。ただし特定の危険を伴う危険有害業務や、高度な技術を要する作業に従事する場合には、法定免許や国家資格、技能講習の修了証などが必要ですので、一人前の鳶職になるためには、そうした免許や資格をいくつも取得しなければなりません。
特に「足場の組立て等作業主任者」、「玉掛け技能講習」、「型枠支保工作業主任者」の3つは、鳶職が必ず取得しなければならない国家資格で、「鳶職の三種の神器」ともいわれています。また、鳶職の技能を認定する鳶技能士(1級、2級、3級)や、建設施工管理技士(1級、2級)などの国家検定もあり、それらの資格保有者がいなければ、作業はもちろん現場への入場すらできない場合もあります。
ほかにもフォークリフトや高所作業車、移動式クレーンなどの運転技能講習をはじめ、ガス溶接やアーク溶接などの技能講習や特別教育、安全衛生責任者教育なども必要に応じて受講しなければなりません。鳶職といえば、体力勝負のイメージばかりが強い職種ですが、危険をともなう仕事だからこそ、勉強が欠かせない職種でもあります。
鳶職の仕事は請負契約が主体であるため、勤務体系は現場によりけりです。作業目的によっては深夜作業がメインの場合もありますが、一般的には午前8時に朝礼が始まり、作業の打ち合わせや準備運動などを行ってから、それぞれの任務に取りかかります。
終業は午後5時で、残業はほとんどありません。また鳶職は重労働だけに午前10時、12時、午後3時には必ず休憩をとるように決められています。休日は日曜と祝祭日の場合がほとんどですが、オフィスや学校などの工事は定休日しかできませんので、鳶職の休日もまた現場によりけり、ということになります。
鳶職とは、建設や土木工事の現場で、おもに高所作業に従事する作業員をいいます。鳶職になる時点では学歴も資格も必要はありませんが、高所作業などの危険有害業務に就く場合には、資格や免許取得などの制限があるため、一人前の職人になるには、いくつもの資格や免許を取得しなければなりません。鳶職の年収は、建設作業員の中でも比較的高いです。鳶職の勤務体系は現場によりけりですが、体力を要するので休憩時間を必ずとり、残業はほとんどないことが多いです。